2020年9月26日

第10回書き出し祭り 第4会場感想その2

投稿者: フィーカス

 第4会場の感想の続きです。今回は10-4-9から10-4-17までです。

 なお、10-4-15は私の作品なので飛ばします。

10-4-9 アダルティ・チルドレン

https://ncode.syosetu.com/n0353gl/10/

「ウソをつくと成長してしまう」という世界で冒険する少年たちを描いたファンタジー。あらすじでは「ダークファンタジー」となっています。

 導入から最初の戦闘、物語の方針が書き出しのなかでしっかり書かれていて、まとまっていると思います。ストーリーも「嘘をつくと成長する」「大人になると帰れない」という設定がおもしろいと思いました。嘘をつくと子供のまま大人になっていくことから、この時点でタイトルが回収されている点も良かったです。

 SFやファンタジーは結構説明が煩雑になりがちですが、意外と設定がシンプルなためか、きちんと物語が進行していて読みづらさを感じませんでした。この設定でどのように物語が進んでいくのか、先が気になる物語です。

(それにしても今回の書き出し祭り、「ルイ」が多いなぁ(100作品中4作品に登場))

10-4-10 青を飲み、死に向かう僕たちは、あの日観た映画に思いを馳せる。

https://ncode.syosetu.com/n0353gl/11/

 安楽死が許可された世界で、安楽死に必要な薬品「ディープブルー」を、他人と交換するところから始まるファンタジー。

 タイトルからして話題が大きく、様々な予想がされていました。特に「青を飲み」の部分が詩的でかっこいいと思いました。

 ストーリーですが、自分にしか使えない、飲むと即座に死ぬ薬「ディープブルー」が登場します。これが「青」の正体なのですが、入手方法が決まっている上に主人公はそのルールを破る形で入手しています。これを書き出しで一気にやっている点で、書きなれている人が書いているという印象を受けました。

 自身にしか使えない毒薬を交換したことで、殺す立場にも殺される立場にもなれるという点も、設定がすごいと思いました。話の広がりがとても大きくなるうまい設定だと思います。

10-4-11 風が通る道

https://ncode.syosetu.com/n0353gl/12/

 家庭の事情で奉公人として商人の屋敷に売られた少年の物語。

 書き出しの時点で何も知らされずに商人の屋敷に仕えさせられているという点で、時代背景やどういう話なのかという方針が読める点は良かったと思います。ただ、せっかくなのであらすじの通り、主人との出会いまでは書いてほしかったなというところはあります。

 ある意味では奴隷という立場になるため、あらすじ通りの主人との友情物語や、この屋敷からの脱出、成り上がりまで見えるため、物語の幅は広そうです。

10-4-12 レディ・ヴィランのたわわごと

https://ncode.syosetu.com/n0353gl/13/

 地球を侵略しようとする宇宙人? と、地球を守るための連合軍との対戦を描いたSF。

 これもタイトルが非常に注目されていました。「たわごと」ではなく「たわわごと」なのです。単なるうち間違えという説もありますが、今まで修正されていませんし、もし何かしら意味を持たせているのであればこのタイトルを作者は天才的だと思います。

 ストーリーですが、侵略者から地球をヒーローが守る、という分かりやすいもので、ウルトラマンのような感じのストーリー……なのですが、この戦闘により被害を受けるはずの住人に危機感がなかったり(というか、「暮らしに影響がない」とまで言われている)、侵略者(レディ・ヴィラン)にファンがいたり、タイトルが悪役側メインだったりと、かなり普通のヒーローものとは毛色が違う作品となっています。

 同じようなコンセプトで実写化したら人気が出るのではないでしょうか。ストーリーが読めないので続きが気になるところです。

10-4-13 間取聖太郎と奇怪な日常。あと魔導書

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 魔導書の話が分かる主人公と魔導書の、奇妙な日常ストーリー。

 特殊なあらすじで話題を呼びました。あらすじというか目次ですが。

 これだけ目次を作っているということは、恐らく続きを書き終わっているのだと思います。もちろん連載、しますよね。しますよね(

 書き出しでは魔導書との出会いから始まっていますが、メインはタイトルの通り「奇怪な日常」です。その証拠として、既に主人公の家には自身の気分で中身が変わる水差しが登場してきます。

 しかしこの設定、魔導書だけだったら多分面白くならなかったと思います。面白くならないというか、話の広がりが狭くなると思います。他にも奇怪な挙動を示すアイテムが出るからこそ、「この先も水差しみたいな変なアイテムが出るんだろうな」と期待できるわけです。これを書き出しに持ってきているあたりうまいと思いました。そう考えると、このタイトルも納得です。

10-4-14 酒と肴とあれやこれ。

https://ncode.syosetu.com/n0353gl/15/

 雨宿りのために立ち寄った居酒屋で二人の男があれやこれやと話を広げるヒューマンドラマ。

 お菓子(金平糖)を入れている瓶が高価なものだったり、準備した盃が珍しいものだったりと、二人の価値観のズレによる軽妙なやりとりが楽しい話です。

 なんとなく短編っぽい内容なので、この話でどういう展開になるのかは非常に気になります。肴の種類でも話題は広げられますし、ちょっと外で飲みに……ということでご当地の話も出来そうです。

10-4-16 オルトロス〜双頭の番犬〜

https://ncode.syosetu.com/n0353gl/17/

 犯罪者の息子である主人公が、よからぬ噂を持つ男と組んで捜査を行う刑事もの。

 オルトロスというと某ゲームのタコのモンスターを思い浮かべるのですが、調べてみるとタイトルの通りギリシャ神話における双頭の怪物で、ケルベロスの弟分に当たるそうです。性格は落ち着きがなくせっかちとのことで、もしかしたら二人の登場人物の性格も反映しているのかもしれません。

 ストーリーは犯罪者の息子というコンプレックスを解消すべく刑事になった主人公が、他人が扱いづらいと言われている別の刑事と手を組んで事件を解決していく話のようです。しかし、あらすじを読むと、実はこの手を組んだ刑事が主人公の父親と手を組んで犯罪を行っていたということで、様々な大どんでん返しが期待できます。

 さて、あらすじを読むと結構続きが期待できるのですが、書き出しの段階では刑事と出会うところまでしか書かれていません。ここであらすじまで込みで評価するか、書き出しだけで評価するかで評価が分かれると思います。

 とはいえ十分気になる引きになっているため、書き出しだけの評価でもかなり高い評価が得られるのではないでしょうか。

10-4-17 世界から蝶が消えた夜

https://ncode.syosetu.com/n0353gl/18/

 活動の源となる「活力蝶」を求めて旅をする少年と少女のファンタジー。

 世界観が良いと思いました。タイトルやあらすじだと「何で蝶を求めてるの?」「何で蝶が消えたの?」と疑問に思いますが、書き出しを読むとなんとも幻想的なイメージが思い浮かびます。

 ストーリー的にはまだ蝶を探し求めている段階で、長い年月歩き回っているだけのように見えますが、ここから蝶が消えた理由が明らかになったり、旅の途中で様々なイベントがあると思われます。続きが気になる作品です。

第4会場感想その3へ続く→