2020年9月26日

第10回書き出し祭り 第4会場感想その1

投稿者: フィーカス

 第10回書き出し祭り感想、第4会場分です。今回は10-4-1から10-4-8までです。

 第4会場はほとんどが締め切りぎりぎりに提出した人の作品なのですが、わざわざ第4会場に入るためにぎりぎりまで提出しない人がいます。通称「チキチキ組」と呼ばれる人たちで、かなり特殊なもの(書き出し祭りや小説に対するメタのようなタイトルを付ける、特定の人にめちゃくちゃ刺さる題材にするなど)が多くなります。

 そしてなんといっても主催者の肥前文俊先生の作品があるというのが一番の特徴でしょう。肥前先生と戦うために第4会場を選ぶ人もいると思います。また、今回は前回覇者である玄武総一郎先生も第4会場(しかも何故か補欠枠)にいるため、かなり厳しい戦いになると思われます。


君の小説を読みたい 著:玄武総一郎

10-4-1 Killing Body

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 持ち込まれた遺体が不自然な状態で運ばれ、かつ解剖しても死因不明であるためとある殺人鬼が浮上したことから始まるサスペンス。

 推理小説などで司法解剖などのシーンがよく出てきますが、ここを物語の中心に持ってきているのは面白いですね。しかも「死因が不明」というのは好奇心がそそられます。

 書き出しでは殺人鬼(キリングボディ)がどういうものなのかがあまり詳しく書かれていませんが、導入としては面白いと思いました。

10-4-2 カルト•スクランブル

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 オカルトSFで成功しようと考えている作家が、実際のオカルトを体験するところから始まるSF……サスペンス?

 時々「作家は経験したことしか書けない」みたいな話題がありますが、それを体現するような作品です。そうそうオカルト体験なんてできませんから。

 今回の書き出し祭り、割と主人公が小説家の作品が多いのですが、体験できないようなことを体験させるというタイプはあまりないかと思います。しかも「実際にあり得そう」という点がリアリティがあって良いと思いました。

10-4-3 残念ながら原稿は命より重いです。

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 小説家を人質に取られ、救出に向かうのかと思いきや小説家ではなく原稿を回収しに行くという編集者のコメディ。

 書き出し祭りによくあるメタ枠というかネタ枠というか。とにかくタイトルが強くてタイトル発表の時から話題になっていましたが、内容もしっかりネタでした。でも破たんしているところが無くて面白いんですよね。

 若干おかしいように見える編集者も、「編集者」という肩書がある以上これくらいの行動はとってもおかしくなさそうですし、人質を取った犯人がある程度常識人であることでしっかりとした突っ込み役に回っています。漫画があったら読んでみたいですし、ドラマ化したらシュールでもっと面白くなるんじゃないでしょうか。

10-4-4 ターミナル・ヴェロシティ

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 ドッペルゲンガーが当たり前の世界で仕事をしていた主人公が事件に巻き込まれるSF。

 あらすじが特に面白いですよね。読者に対する問いかけが入っている文章はとても興味が持たれます。何故かというと、普通は流し読みするところでも問いかけが入ると自分の答えを考えてしまうんですよね。そう言った点で魅力が産まれます。

 ストーリーですが、死なないのが当たり前になっているのがおもしろいですね。死んだ方がおかしいというか。設定はいろいろ面白いところが多いのですが、ただ書き出しだけだと「ここからどういう話になるのか」というのが分からなかったため、続きに期待です。

10-4-5 俺のギアスが世界を制す

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 制約(ギアス)によって能力を強化できる主人公の物語。ハイファンタジーに当たるでしょうか。

「ギアス」というとあれを思い浮かべる人が多いと思いますが、もともと「義務」や「制限」といった意味合いがあるようです。

 書き出しではギアスに関する説明が実践形式で行われている他、その他の登場人物の特徴や世界観、物語の方針も描かれていて、まとまっている印象を受けました。ギアスを守れなかった場合のデメリットがあるのもおもしろいと思います。

 ただ、このギアスに関して、少し疑問が残りました。ギアスは

・制約を達成した時点でバフがかかり、達成できなかった時点でデバフがかかる
・制約を受けた時点でバフがかかり、達成できなかった時点でデバフがかかる

 のどちらかが分かりませんでした。恐らく後者なのでしょうが、その辺のルールが整っていると、後々の物語も理解しやすいのではないかと思いました。

10-4-6 恋人たちの転生無双~異世界でもお幸せに~

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 現世で恋人同士だった二人が、異世界でも二人で活躍するファンタジー。

 ……なのですが、書き出しは転生する直前で終わっているため、異世界で活躍するシーンはありませんでした。

 最近の傾向からすると、こういった転生前の話というのは読者があまり興味が無いため、転生した後に転生のきっかけを細かく書いた方が良いのではないかと思われます。逆に転生のきっかけは細かく書いた方がいいという人もいるため、どちらがいいとも言えません。当作品は後者になっています。

 書き出し祭りではインパクトが強い作品が多く、当作品はどちらかといえばインパクトは弱めだと思います。とはいえ内容自体が悪いわけではなく、長編の書き出しとしては十分だと思いました。むしろきちんと先の話を作っているがゆえのこの書き出しなのではないかと思います。

10-4-7 バカは死んでも治らない! ~死ねない俺と、死んだあいつ。そして、死ねるお前~

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 被殺趣味(殺されることが趣味)の少女とその少女に力を与えられた少年のファンタジー。

 被殺趣味というのが変わっていますね。しかもどう考えても体験できないものなので、まったく気持ちが読めないというのがおもしろいところです。戦闘が始まれば真っ先に死にに行くって、どんなサイコパス(?)なのでしょうか。

 書き出しはそんな登場人物の特性を示したところで終わっているため、この設定が今後どういう影響を及ぼすのかが楽しみですね。なんか、戦闘の邪魔ばかりしてそうですが……

10-4-8 赤錆の雨

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 特に何もなく自分に自信を失っている主人公が、大学生になってオカルトサークルの見学をするところから始まるヒューマンドラマ。学園もの?

 書き出しは主人公が高校卒業をするところから始まり、サークルの見学を終えた所で終わっています。こちらも恐らく続きを見据えての書き出しになっているのか、タイトル回収や物語の方針までは書かれていません。続きに期待です。

 ただ、全体的に過去の話が長かったため、やはり書き出しでどういう話かの方針くらいは示してほしかったところです。

第4会場感想その2に続く→