2020年9月18日

第10回書き出し祭り 第2会場感想その2

投稿者: フィーカス

 第2会場の感想の続きです。今回は10-2-9から10-2-17まで行います。最初のあらすじがかなりいい加減になってきてしまい申し訳ありません。

10-2-9 僕はただのドラゴントレーナーなんですが!?

https://ncode.syosetu.com/n0183gl/10/

 ドラゴントレーナーとしてドラゴンを育成する少年と、そのドラゴンが織りなすファンタジー。

 トレーナーというからには育成シーンが欲しいと思いましたが、最初に主人公とドラゴンとの関係を示しているのは良いと思いました。また、いきなりピンチになるのも、続きが気になる引きになっていて良かったです。

 一番の特徴は、ドラゴンがガンガン主人公に好意を寄せている点ですね。人間同士じゃないのにどういう関係に発展するのかが気になります。さらに「あくまでトレーナーであり、いずれは別れる日が来る」ということが提示されているところもぐっときます。

10-2-10 「私との接触は密です」とクラスメイトの彼女はキメ顔で告げたんだ

https://ncode.syosetu.com/n0183gl/11/

 化け物がうろつく街で自殺を試みる少年と、ヒーローショーが好きな少女が出会うところから始まる現代ファンタジー。恋愛? ラブコメ?

 タイトルはすでに書き出しの時点で回収されているのですが、話の内容とあまり関係がなく、現時点ではこのタイトルにする意義があまりないような気がします。逆に最終回の最後のセリフとかで使われると、結構エモいですよね。

 ストーリーとしては、ヒロインがヒーローものが好きで、突然湧いてきた化け物を倒すということで、「化け物は何故現れたのか?」「ヒロインは何故こんなに強いのか?」など、謎が残されたまま終わっていて興味を引くものとなっています。やっぱりタイトルが「ちょっと言いたかっただけ」感が強いので、連載の際はこの辺ももっとうまく回収できるような内容であればと思います。

10-2-11 英雄学院のマガイモノ~偽物が本物に至るまで~

https://ncode.syosetu.com/n0183gl/12/

「天啓」と言われる能力が授かる世界で、英雄の母の血を継ぐ主人公が、英雄になる資格が無いことを言われつつも、自身の能力で英雄を目指すファンタジー。

 やや構成が複雑で読みづらさを感じますが、主人公の過去や動機、最後の引きまで興味が持てる、まとまった書き出しだと思います。

 最後に紋章が浮かび上がって、「結局英雄の資格は得られるのか?」という点も興味を引きます。続きが楽しみな作品です。

10-2-12 404 Not Found

https://ncode.syosetu.com/n0183gl/13/

 物語の主人公を辞めたい女性と、物語の主人公になりたい男性が入れ替わる物語。ファンタジーになるのでしょうか。SF?

 既にタイトルの時点で話題性が十分で、あらすじもかなり気になる内容だったので、第2会場ではひときわ目を引く存在でした。

 ストーリーも今まで見たことも無いような話で、とりわけ「世にも奇妙な物語」に収録されていそうな話になっています。物語の途中に「あらすじ」が入ったり、構成も特殊なものになっています。

 さて当作品、書き出しだけ見れば「やばい作品」と感じる人が多いと思うのですが、「長編の書き出し」としてはどうなのでしょう?

 私は正直ここまで(+α)でほぼ完成されているような作品で、例えば10万文字の長編だと想定すると物語の内容が想像できません。例えばこのまま入れ替わった男性が異世界活躍する、という話だとタイトルも書き出しも「そこだけやりたかった」だけになってしまいます。となると、「主人公」をやって行くうちにどんどん「主人公」をやりたくなくなり、次々「主人公」が入れ替わるという展開が予想されます。

 ここまで考えると「長編の書き出しとしてはどうなのかな?」とも思えますが、内容で票を取って行くのは間違いないでしょう。

10-2-13 転生して凶悪な悪魔に人殺しスキルをもらったので、悪魔を裏切って追い詰めます!

https://ncode.syosetu.com/n0183gl/14/

 転生した少女が悪魔から人を殺すことができるスキル(厳密には「魂を奪うスキル」)を与えられる異世界ファンタジー

 いわゆる「なろう系」と言われる長文タイトルで、内容もある程度テンプレートにそった形になっています。なろう系になれている人には非常に読みやすい作品ではないでしょうか。

 スキルはかなり優秀、だけど人殺しのスキルなので使いたくない、でも使わないと成長出来ないというジレンマを抱えた主人公。書き出しでは早速スキルを使っているものの、その結果どうなったのかまでは書かれていません。全部を説明したくなりますが、そこで引きを作っている点は良いと思いました。

 テンプレートと言われるとアレルギーを起こす人もいますが、きちんと書けば読みやすい導入になりますし、慣れている人には頭に入りやすい形式ではあります。テンプレを使おうと思う人には参考になるのではないでしょうか。

10-2-14 君に、さよならを言うために

https://ncode.syosetu.com/n0183gl/15/

 とある事故によって人がいなくなったゴーストタウンで、まるで生きているかのように振る舞う死霊を次々と殺す(「処分」する)仕事をしながら、恐らく亡くなっているであろう恋人の死霊を殺す主人公の物語。ジャンルはSFとなるでしょうか。

 何故一度死んだ人間を「処分」する必要があるのかは明確に描かれていませんが、書き出しの部分での方針、趣旨はきっちり示されており、非常に読みやすい話になっています。

 主人公の目的は明らかになっていますが、様々な謎が残されていて、非常に気になる内容になっています。多分、書籍化作家さんが書いたものだと思います。

10-2-15 フェアリーフォーチュン・ティーカップ!~有楽内まなかはみんなに勇気を届けたい~

https://ncode.syosetu.com/n0183gl/16/

 占いを信じる小学生の主人公が、祖父から占いができるティーカップから現れた妖精と共に占いを始める現代ファンタジー。

 タイトルから正直気になっていました。内容も期待通りで、日曜日の朝アニメ枠でやってほしいと思える内容です。

 書き出しではまだ妖精の活躍が無いですが、設定が好みで続きが期待できる作品です。ファンアートがはかどるのではないでしょうか。

10-2-16 君が動けないなら、僕が君を頂上へ連れて行く

https://ncode.syosetu.com/n0183gl/17/

「球体」である主人公とヒロイン? が、自ら転がることで上へ上へとステージを駆け上って行くストーリー。ファンタジーになるでしょうか。

 タイトルからいろいろな憶測がされていたもののあらすじで覆され、さらに本文でも覆されるというとんでもない作品。いや、まさか球体が主人公なんて思わないじゃないですか。これは作者の発想の勝利でしょう。

 読むだけで「オリジナリティとは何か」を考えさせられる内容です。これぐらい振りきれなければ、公募で勝つのは難しいでしょう。

 内容的にはのんびりとした話のように感じますが、いろいろ内容を考えていくと謎だらけなことに気がつきます。

 何故主人公たちは球体なのか? このステージを作った人物は誰? 目的は? 何故主人公たちは人間の概念が分かる? 転生者? ステージをクリアするとどうなるの?

 きっと作者の方は、我々の想像のつかない着地点に導いてくれることでしょう。何しろ、ここまで何一つとして予想が当たった人はいなかったでしょうから。

10-2-17 僕には魔女でラスボスの彼女がいます、振られましたが

https://ncode.syosetu.com/n0183gl/18/

 恋人が実は魔女であり、振られて敵対関係になってしまった主人公が、自ら持つ「入れ替え」の能力だけで彼女を殺すことを目的とする現代ファンタジー。

「はずれスキル系」と言うのでしょうか、入れ替えだけでどうやって戦うのかというのも気になるところです。書き出しはストーリーがきちんとまとまっていてきれいな流れになっていると思います。

 主人公のセリフもなかなか印象深いですが、この言葉をどうやって実行していくのか……楽しみです。

第2会場感想その3に続く→