2020年9月17日

第10回書き出し祭り 第2会場感想その1

投稿者: フィーカス

 第2会場の感想です。

 第2会場は第1会場に惜しくも入れなかった人があふれだす会場であり、やはり実力のある人が集まりやすい会場です。また、個性的な作品も多くなるため、上位に入るためには書き出しとしての魅力だけではなく、物語の個性も重要となってくるでしょう。

10-2-1 エルマンデルへの福音書

https://ncode.syosetu.com/n0183gl/2/

「祈り手」と呼ばれる少年とその護衛が、荒れた世界で旅をするファンタジー。旅でいいのかな?

 タイトルは回収されていませんが、関連する「教会」や「祈り」などのワードがちりばめられています。主に主人公がどういう人物かということが語られたところで終わっていますが、出来れば護衛の方の活躍も見たかったところ。

 恐らく書き出しでは書ききれない要素がまだまだたくさんあると思うので、これから期待できる作品だと思いました。

10-2-2 偽りハネムーン〜宮廷魔導師、意中の相手と極秘任務で偽装中〜

https://ncode.syosetu.com/n0183gl/3/

 自分より強い者としか結婚しないと決めている宮廷魔導師の女性が、その上司と護衛対象である主人と共に疑似的なハネムーンを行うという恋愛ファンタジー。

 書き出しでは上司と主人に言い寄られる予知夢を見た後、主人に呼び出されるところで終わっています。タイトルやあらすじではこの後疑似ハネムーンに行くことになっているようですが、予知夢の部分が非常に長いため、ここを削ってハネムーンに行く命令を受けるところまでは書いてほしかったところです。

 しかし「疑似ハネムーン」とは新しいですね。ただでは終わらない気がします。今後の展開が気になる話です。

10-2-3 古谷刑事の事件簿~被害者遺族のJKが同棲を求めてくる件~

https://ncode.syosetu.com/n0183gl/4/

 とある刑事が一家殺害の現場に出くわし調査を進めようとするが、何故か被害者の娘が同棲を求めてくるという一風変わったサスペンス。

 多分読んでいて思った人多いのではないかと思いますが、違和感がたくさんあるんですよね。それも、調査不足とか言葉の意味が違うとかではなく、恐らくわざと作られた違和感が。例えば被害者の遺族であるJKが、家族の死体を見た時の反応が「なんか……グロっ……」で終わらせているところとか。

 こういう作られた違和感があると、きっときちんと回収してくれるだろうという期待感が持てます。解決が期待できる謎を残すのは、書き出しの引きを作る上での重要なテクニックと言えそうです。

10-2-4 ブレイブ・オブ・ブレイブスレイヤー:勇者殺しの英雄外典

https://ncode.syosetu.com/n0183gl/5/

 勇者一行と旅をしていた暗黒剣士の少年が、突然裏切られ(?)て追放されるところから始まるファンタジー。

 まず何より目を引くのが、書き出しの時点で物語が二転三転しているところ。しかも、これをファンタジーでやっている点です。いろいろと説明をしたい書き出して、これだけ事態を急変させるのはチャレンジと言えるのではないでしょうか。

 一方で、そういった展開を目指すためか、いろいろと省略されている部分があると思われます。恐らく「書き出し祭りの書き出し」にするために削ったのではないでしょうか。

 しかし、コンセプトが面白く、今後の展開が気になる書き出しとなっていると思います。

10-2-5 アデル嬢の平穏な日常

https://ncode.syosetu.com/n0183gl/6/

 双子の兄が異世界へ召喚されるため、妹を守るように言われた主人公がメイドとして双子の妹の学園に忍び込む学園ファンタジー。

 書き出しは兄が召喚に応じ、これからの方針を示したところで終わっています。かなり説得の場面が長くなっていますが、これにより内部事情が分かるような構成となっています。

 書き出しの部分だけでは内容があまり把握できませんが、これから主人公がメイドになって妹の学園で一緒に過ごしたり、いろいろ事件が起こるようです。一方で召喚された兄の方はどうなるのか……

10-2-6 ルイ王子とユズ姫〜居候女神は人気コスプレイヤー!?〜

https://ncode.syosetu.com/n0183gl/7/

 姉と同棲していた主人公が、姉の友人と言う女性と同居することになり、そこから趣味がコスプレであることが明らかになるというラブコメ。

 いわゆるおねショタと呼ばれるもので、書き出しでは二人の生活部分が多くを占め、コスプレ会場で出会うところで終わっています。

 最後に女性が実は男だった? ということをにおわせていますが、コスプレの会場なので「男だと思うほどコスプレが似合っていた」という意味なのかもしれません。ともあれ、ここからどう話が展開されるのか、気になるところです。

10-2-7 「黒」と「金」とカミのまにまに

https://ncode.syosetu.com/n0183gl/8/

 好きな男子に告白したものの、金髪ロリ以外受け付けないという理由で振られた主人公が、それでもなんとか振り向いてもらおうとする学園ラブコメ。

 タイトルのセンスが光る作品です。タイトルが発表された時点でいろいろな予想がされていましたが、「カミ」は「髪」の方でした。もしかすると、今後「神」にかかったことが起こるのかもしれません。

 書き出しの部分でどのような話かが分かるようになっており、最後の引きは次の話につながる、主人公への「試練」で締められています。この困難に対してどういう行動を取るのか、というのはとても気になる、良い書き出しになっていると思いました。

10-2-8 国立大学法人東京魔術大学 ─血継魔術科─

https://ncode.syosetu.com/n0183gl/9/

 特殊な魔術を使える主人公が、様々な事件が起こる東京で魔術を使って次々と事件を解決していく現代ファンタジー

 なんと酔っ払った主人公が逮捕されたところから始まっています。しかも全裸。この書き出しは、相当インパクトがあるのではないでしょうか。

 恐らく普通の人が同じアイデアで書いた場合、「ここ、国立大学法人東京魔術大学では――」のような感じで学校から始まっているのではないかと思います。この書き出しはそうそう思いつくものではないでしょう。それだけで個性が光る作品と言えます。

 話の見せ方もうまく、主人公が優秀であることもうかがえます。構成力が光る作品であり、今後も期待に添える話が続くのだろうと予想できます。

第2会場感想その2に続く→