第10回書き出し祭り 第1会場感想その3
第1会場の感想の続きです。
10-1-18 人形のように生きていたら本当に人形になったので
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人形のように生きてきた主人公が本物の人形になり、そこから人形の世界を作ろうというファンタジー。
書き出しではダンジョン(巨大迷宮)の奥深くで人形となった主人公が、魔法やダンジョン内の物資、魔物(の死体)を駆使してダンジョンから脱出するところまでが描かれています。ここから、数を増やした人形たちを使って物語が進んでいくようです。
書き出し部分はダンジョンから出る方法(魔法で人形を作り、モンスターを倒し、素材を利用して人形を作りながら、戦力を整えていく)が描写されていますが、この構成と文体はかなり好みに個人差がありそうです。
文章の書き方が独特なため、「丁寧な描写、表現が豊か」だと判断する人がいる一方「読みづらい」という人もいると思います。また、書き出し部分はダンジョン脱出のための人形増殖に終始しているため、この書き出しの是非についても、意見が分かれるのではないかと思います。
10-1-19 あやかしお悩み相談所
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主人公とその付き添いの少女が、悩みを抱えたあやかしたちの相談に乗り、その悩みを解決していくという物語。ジャンルは現代ファンタジーと言えるでしょうか。
タイトルからして評判が高く、真面目なストーリーかと思いきやコメディチックに描かれているため、意外な展開だったと思った人が多かったと思います。
「どういう話か」という説明はあまりされておらず、序盤からストーリーを進めることで読者に「こういう話だ」という理解をさせるタイプです。説明が多くなりがちな書き出しでは理想の展開だと思います。多分書籍化作家さんが書いたものでしょう。
書き出しの引きも、これまでと打って変わって意外な展開となっており、「この先どうなるのだ?」と気になる引きとなっています。アイデア自体も、いくらでもあやかしを出せますし、悩みも難しいものから簡単なものまでいろんなアイデアが出せるため、長編に向いている話だと思いました。
10-1-20 キミは放課後のアイテムマスター
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異世界に行き来できる後輩の少女と文芸部の先輩が、異世界の様子を部誌のネタにする物語。異世界に行き来できるものの、ジャンルは学園ものでしょうか。
アイデア自体はとても面白いと思います。異世界ものといえば異世界に行ったきりでRPG的なものが多いですが、異世界に行き来できることが一つの要素でしかなく、それをもとに部誌を作るのが目的というのが斬新だと思います。
ただ、あらすじと書き出しがほぼ一続きになっているのが気になります。あらすじがプロローグ、書き出しが第1話という感じでしょうか。書き出しだけ見ると、物語が唐突に始まっているようにも思えます。
また、書き出しではせっかくのアイデアがあまり活かせておらず、部誌にした時の他の人の反応くらいまではあってもよかったかなと思いました。
10-1-21 夜明けの海を歩くには
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太陽が寿命を迎えた世界で、闇の中で魔導を放つことで「昼の営み」と「夜の営み」を行う種族のSFファンタジー。
魔導で昼と夜を操るという設定がとても斬新だと思いました。普段意識しない昼と夜の入れ替わりも、もし太陽が無くなってこのように行われたらと想像すると、なかなか面白い物があります。
やはりこの世界観に入り込めるかどうかは、個人差が大きいと思います。ただ、この設定でどのように話を進めていくのか、続きが気になるところではあります。
10-1-22 高嶺の花とは呼ばせない!!《クール(と勘違いされてる)系女子とのドタバタ奮闘記》
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主人公の男子高生が、高嶺の花と呼ばれるクラスメイトの変な癖を見つけてしまうところから始まるラブコメ。
ベタといえばベタですが、なかなかヒロインの被害妄想? がすごくて、とてもキャラクターが立っていると思いました。こういう性格なら、あらゆる所でトラブルが起きることが想定でき、ラブコメとして話が進めやすいのではないかと思います。
とはいえやはりベタ感はぬぐえなかったので、書き出しの時点でも何かしら同系列の話とは差別化できるような要素が欲しいと思いました。
10-1-23 団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画
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自殺志望のOLがイケメンな死神と出会い、何故か動画作成の手伝いをすることになるところから始まる話。最終的にはラブコメになるのでしょうか。
ラブコメで意外と重要なのが登場人物のキャラ付けだと思いますが、書き出し部分でかなり登場人物に感情移入できる形になっているため、主人公になりきって読むことができます。また、「人生の実況」というアイデアも、いろんな人の人生を書くことができるため、話が広がります。動画を通じて別の死神が人間界に興味を持つ、という動きも出来そうです。
10-1-24 神の子と魔女見習いの異世界譚
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人の感情が色で見える少年と、少年の命を狙う者がいると知る異世界から来た少女が、原因となる異世界へ向かうファンタジー。
もしかしたらどこかで使われているかもしれませんが、感情や人の気持ちが色で分かるという設定、その特性のせいで命を狙われているという展開はとても興味深いと思いました。
一方で、(当作品のアイデンティティを否定することにつながりかねませんが)これらの設定があるにも関わらず、異世界に向かう必要性がいまいち分かりませんでした。上記の設定で現代世界の中で終わらせても十分な作品になったのではないかと思います。主人公が持っている特性が原因である以上、敵が命を奪おうとする目的はいろいろ設定できるはずなので、異世界にこだわる必要はないような気がします。
10-1-25 木星、行きます~人類で初めて超音速へと到達した魔女が木星へ辿り付くまでの物語~
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空を飛ぶ魔女が、その飛行速度が音速を超え、最終的には木星を目指すファンタジー。
書き出し部分は魔女が音速を超えたというところで終わっており、木星旅行については特に触れられておらず、あらすじで分かるのみとなっています。書き出しでの音速を超えるまでの描写はかなり細かく書かれており、実際にその場にいるかのような臨場感あふれる描写となっています。
タイトルの時点で第1会場ではトップクラスの人気だったと思います。ただ、書き出しの部分ではそこまで言及されていないため、「全体を見ればこの書き出しで十分先が期待できる」と判断するか、「音速を超えるまでの過程に終始していて物足りない」と見るかで評価が分かれそうです。あらすじまで含めれば、期待値は非常に高いでしょう。
第2会場その1へ続く→