小説評価シート⑧ dookuさん
評価シート第8回です。
小説を読んでいる時、誤字脱字や小説作法の間違いなどに気が付くことがあると思います。
誤字脱字や小説作法ミスを完全に修正するのは困難なのですが、それらが目だって気が付くということは、その人の文章能力がかなり高いのではないかと思います。
だって、小説作法守っていない人にミスがあっても、大して気にも留めませんからね。
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dookuさんの小説の評価シート
今回はdookuさんの「ありがとう」の評価シートを作成しました。
※評価シートにはネタバレが含まれています。まずは本文を読んで、どんなところがおもしろいか、改善点は何かを考えてみましょう。
あらすじ
当作品の見どころ
当作品は二人の異なる病気を持つ登場人物の出会いから、お互いの視点を通してどのような価値観、病気による悩みを持つかを端的に書いたヒューマンドラマである。珍しい病気を持つことで、どのような悩みや心情変化があったのか、多くの人に知られる良いきっかけとなるだろう。
見どころは、病気を抱えた人物の価値観や考え方について学べるところだろう。体験した人にしか分からない辛さが、リアルに描写されている。筆力の高さも相まって、納得感の高い話になっているといえるだろう。
文章力 ★★★★★
「文章力」では、主に小説作法や読みやすさ、読者の観点からきちんと情報が伝わるかなどについて評価していきます。
大人顔負けの高い文章力
当作品はとても高校生が書いた文章とは思えないほど文章力が高い作品となっています。無理に気取った表現もなく、淡々と事実を述べる一方で、適度に比喩表現が取り入れられているため、非常に読みやすく、容易に情景が思い浮かびます。
それゆえに作法的なミスが目立つ
高い文章力ゆえに、ミスがあると目立ちます。具体的には、不自然な一字下げが該当します。
ただ、すぐに修正できる物ですし、気にするほどのものではないでしょう。
総評:文章力については申し分なし
文章力については、間違いなく高校生以上、あるいは一般的な大人以上にあると思います。数をこなすことで、より精度を高めていきましょう。
以上のことから、文章力については5段階中「5」と評価させていただきました。多少ミスは気になるものの、私から言うことはほぼ何もありません。
構成力 ★★★★☆
「構成力」では、主にストーリーの流れについて評価をしていきます。
一人称視点の「正しい視点切り替えのやり方」
私は一人称視点の小説については、極力視点変更をしないことを勧めています。というのも、何も考えずに視点変更をしている人が多すぎるからです。
しかし、当作品ではそれぞれの登場人物の視点から話を進めることにより、「両方の考え方や価値観を知ってほしい」という作者の意思を感じます。基本的に一人称視点は、語り手の共感性を高めるというメリットを得るために選ぶことが多いですが、当作品では視点変更により両者の共感性を高めることに成功している例と言えるでしょう。
もし一人称で話を進めようとする人で視点変更を多用しがちな人は、「何故視点変更が必要なのか」ということを考えながら書いていくと良いのではないでしょうか。
とはいえ同じ場面を長々と見せられるとさすがに飽きる
視点切り替えで同じ場面を描く欠点として、「同じ場面を見て同じセリフを読まなければならない」という点です。
せっかく良いセリフや言い回しで話を進めても、二回目を読むと「それさっき読んだ」となってしまい、感動が薄くなってしまいます。特にセリフはまったく同じになることが多いため、同じ場面を描くにしても重なる部分が少なくなるようにしたり、視点を変えたからこそ見える展開を作ったりした方が良いでしょう。
問題は、当作品でそれを無理にやろうとすると、作品自体が壊れそうな気がしますが……
総評:高い構成力で魅せる表現ができている
全体的な構成を見ても、導入の場面やキャラクターづくりの部分、盛り上がりを見せる部分がきちんとしており、高い構成力があると思います。
以上の観点より、構成力については5段階中「4」と評価させていただきました。満点とはしませんでしたが、十分な内容だと思います。
キャラクター ★★★★☆
「キャラクター」では、登場人物の魅力、設定について評価していきます。
対照的な二人の病状と価値観によるキャラクター作り
当作品のキャラクターは、病気による外見もさることながら、価値観によるキャラクター付けが注目されるところでしょう。「同世代は悪意を持って病気をいじってくる」と考える充城と、「色盲ゆえに白い髪を綺麗だ」と考える瑞季、この価値観が違う二人が出会うことで、物語が進展していきますから、しっかりと「二人の価値観を設定する」ということが重要でしょう。
総評:キャラ設定が過不足なくできている
当作品では突出した特徴こそないものの、登場人物の設定がしっかりできており、過不足ない状態であると思います。
以上の観点から、キャラクターの評価については、5段階中「4」とさせていただきました。満点としなかったのはあくまで「突出した特徴を持つ登場人物がいない」という観点があるためであり、これ以上変更する点はないと思います。
オリジナリティ ★★★★☆
「オリジナリティ」では、他の同系列の作品とどのくらい差別化できているかを評価します。
特徴的な構成が高いオリジナリティを出している
構成力のところにも書きましたが、このような文章構成はあまり見たことがありませんし、使う理由もしっかりしている点がよいと思いました。
話としては最初の話だけでも完結していますが、両方の視点から描くことで「両方あって1つの話」というスタイルがきちんと確立できていると思います。これはただ「やりたいからやった」ということでは出来ないことだと思います。
総評:特徴的な構成でオリジナリティをカバー
病気について、名前は聞いたことがある人は少ないと思いますが、症状的にはどちらもよく物語で使われるものだと思います。ただ、これらを活かした構成と文章力で、登場人物や物語の魅力を引き出しているといえるでしょう。
以上の観点より、オリジナリティの評価については5段階中「4」とさせていただきました。何か目立つ突出した物を出すというより、文章力と構成力で魅せている作品だといえると思います。
総合評価 ★★★★☆
以上の評価をまとめると、私の評価は以下の通りになります。
文章力 | ★★★★★ |
構成力 | ★★★★☆ |
キャラクター | ★★★★☆ |
オリジナリティ | ★★★★☆ |
総合評価 | ★★★★☆ |
一言で言えば「完成度が高い作品」と言えると思います。高校生としては文章力も構成力も高く、これ以上改良するところはあまりないといってもいいでしょう。
裏を返せば、「当作品をこれ以上面白くするのは難しい」とも言えます。どこかの言い回しを変えたり構成を変えたり、あるいは話をつけたしたりすれば、作品全体のバランスが崩れてしまうからです。公募で入賞できる可能性は十分あると考えますが、もしも入賞できなかった場合は別の作品を一から作った方が良いと思います。
以上の観点から、総合評価は5段階中「4」とさせていただきました。当作品で満足せず、次々作品を生み出してもらいたいと思います。
改善した方がよいと思う点
ここでは、私が「こうした方がいいのでは?」「こうしたら読んでもらえるのでは?」と考えたことを書いていきます。
推敲する癖をつけよう
当作品では総合評価にも書いた通り、修正すべき点は特に見当たりませんでした。ただ、時々一字下げのミスがみられたので、そこは修正した方がいいと思います。
最後まで書き終えた作品は、プレビューなどで一度全体に目を通すクセを付けましょう。意外と誤字脱字、変換ミス、小説作法ミスなどをやっていることに気が付くと思います。
ターゲット層と主戦場は?
ここでは、どんな人を読者のターゲットとし、どういった場所で高評価が得られそうかを分析していきます。
比較的幅広い年代層で好まれる
文章がしっかりしているので、比較的万人受けする作品ではないかと思います。現在の文体だと10代~20代向けだと思いますが、文章力がありますのでターゲットによって文体を変えることも出来るのではないでしょうか。
短編への公募で入選可能性は十分
構成も文章もしっかりしているため、短編の公募は十分入選可能性があると思います。
長編も書かれているようですので、他の公募にもチャレンジしていきましょう。
作者の今後の課題
過去の入賞作を読んで対策を
様々な公募にチャレンジするのは良いですが、入賞するためには文章力や構成が優れているだけでは足りません。
同じ公募でも、その会社が何を求めているのか、どういうジャンルが得意なのかを把握しておく必要があります。推理小説を募集しているのに異世界ファンタジーを送っても入賞できるとは思えませんよね。
恐らく数は書けると思いますし、長編も短編もいけると思いますので、自分の得意なジャンルを探してたくさん応募してみると、結果も出ますし評価シートで欠点が分かって良いのではないかと思います。
苦手なジャンルにも挑戦してみる
得意なジャンルはあると思いますが、苦手なジャンルにも挑戦してみましょう。
無理に苦手ジャンルを中心に書け、という意味ではなく、インプットだけでもしてみると良いと思います。そうすれば視野が広がりますし、得意ジャンルに取り入れることができて作品の幅が広がると思います。
入賞する力はあると思いますので、さらなる高みを目指してみるのはいかがでしょうか。
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