2020年9月14日

第10回書き出し祭り 第1会場感想その2

投稿者: フィーカス

 書き出し祭りの感想、第1会場分の続きです。

 書き出し祭り第1会場感想その1

 この感想は個人的に感じたことを書いているため、作者の意図とはずれることがあります。

10-1-9 妹に殺されるのは俺だけでいい

https://ncode.syosetu.com/n0181gl/10/

 異能力がある現代社会を舞台とした、現代ファンタジー。

 最初に説明がさらりとあるだけで、開幕から能力全開でのバトルシーンがあり、読み応えがあるシーンとなっています。

 能力を限定せず「異能」としたことで、自由に能力を設定できるところが魅力的だと思います。ただ、ある程度「こういうのを異能という」というのを限定した方が、他の作品と差別化出来たかもしれません。

 妹を助ける方法についても言及されていないので、今後どのような展開となるか楽しみです。

10-1-10 サクラ、歌ってくれよ

https://ncode.syosetu.com/n0181gl/11/

 ストリートミュージシャンの主人公と、神隠し体質を持つ少女の青春ストーリー。青春? 恋愛に発展するかは分かりません。

 書き出しはしばらく離れていた主人公とヒロインが出会い、これからどうするか、というところで終わっています。あらすじでは今後の展開(音楽対決など)が詳細に書かれていますが、書き出しでは現在の境遇を書くにとどまっています。

 あらすじと合わせると話の方針が見えてきますが、書き出しだけでは見えてきません。恐らく本編はかなり進んでいるものと思われます。書き出し祭り用というよりは、きちんと本編を進めた上での書き出しと言えそうです。

 書き出し祭り特有のことですが、あらすじを読んだ後書き出しを読むと、ちょっと物足りなく感じると思います。ただ、あらすじを見ると、面白そうなストーリーとなっていると思います。書き出しだけで評価するか、あらすじも併せて評価するかで評価が分かれそうです。

10-1-11 紅蓮に燃ゆる魔人覚醒

https://ncode.syosetu.com/n0181gl/12/

「魔人が出る」と言われる都市で繰り広げられる、魔法ありのファンタジー。

 書き出しはヒロインの正体が明らかになるところで終わっています。途中で「魔人、忘れられてない?」と心配になるところもありましたが、きちんと最後は物語の軸が見えていたので良かったです。

 また、10-1-9と同じく、あえて「魔人」というおおざっぱなくくりをすることで、その後多種多様な魔人を作りだすことができます。主人公自体が魔人であることが示唆されており、様々な展開が予想できます。絶妙に伏線が回収されている(主人公は「胸ではなく脚線美を重視している」→アラクネ=多数の足が特徴的、など)のが良いですね。

10-1-12 ハルキゲニアの背中のトゲトゲ

https://ncode.syosetu.com/n0181gl/13/

 大学の准教授と女子学生による物語。内容はミステリーかサスペンスとなるのでしょうか。あらすじではミステリーとなっています。

 書き出しの部分は主人公とヒロインの立場などの紹介が中心で、ここから物語が始まろう、というところで終わっています。

 言葉選びのセンスが抜群で、恐らく書籍化作家さんが書いたものだと思われます。それも文芸作品を執筆されている方だと考えられます。

 タイトルの時点で既に評判が高く、気になる人が多かったように思えます。それだけ、タイトルのインパクトが強い作品でした。

 ストーリーは「おもしろそう」という判断が難しいですが、「続きが気になる」という観点ではよい終わらせ方だと思いました。「お願い」や「事件」が少しでも見えている方がいいという意見もあると思いますが、ここが「気になる」というポイントでもあるので、見せ方が上手いという印象です。

10-1-13 絶望坂を蹂躙するのは悪役令嬢か復讐王子か

https://ncode.syosetu.com/n0181gl/14/

 兄の第二王子による暗殺から逃げる主人公と、それを支える悪役令嬢の物語を描いたファンタジー。

 書き出しでは主人公と令嬢との出会いの場面で終わっています。「悪役令嬢」とはありますが、自ら名乗っているだけでまだ悪役っぽいことは起こっていないため、活躍はこれからだと考えられます。

 今後の展開で主人公の復讐劇を描くのだと思いますが、書き出しで主人公の怒りなどの感情があまり見られないため、その辺の動機付けを強くした方がよいと感じました。また、1話の中で視点がコロコロ変わっているため、今どの状況にあるのかが分かりづらく、読みづらさを感じました。

 ストーリーはかなり進んでいる感じはしましたが、書き出しとしてのインパクトや「続きが読みたい」と思わせる力が弱いと感じます。特にインパクトが強い話が多い第1会場では、それが顕著に現れていると感じます。

10-1-14 世界一のお前を殺せるまで、俺は何度でも殺され続ける。

https://ncode.syosetu.com/n0181gl/15/

 喧嘩が強い主人公と、ゲーム世界では無敵を誇る少女が、VRゲームに参加する物語。いわゆるVRMMOもの。MMOかはわかりませんが。

 通常知力や優れた技能を持つキャラは喧嘩に弱いのですが、喧嘩にも強いというのが良いですね。さらにヒロインが圧倒的な力量を持っているという点も、物語の目的を持たせるという点で良い設定だと思います。

 ただ、VRである理由が「ここでなら存分に殺し合いができる」という理由にとどまっており、そのVRゲームならではの面白さを出してほしかったと思います。具体的には、最初はヒロインと対戦するのではなく、チュートリアル的な展開で他のキャラと戦わせて「こういうゲームだ」とやったほうが、読者もゲームに関する理解が早いのではないかと思います。

 目的がヒロインを倒すことであり、既に目の前に標的がある状態でどうストーリーを進めるのか、気になるところです。

10-1-15 下敷きにしてしまった小柄なあの子と、この頃やたらと目が合う件。

https://ncode.syosetu.com/n0181gl/16/

 身長190センチの巨体の主人公と、身長150センチの小柄な少女の、事故から始まる学園ストーリー。あらすじではラブコメとなっています。

 書き出しは主人公が少女を家に送る所で終わっています。主人公と少女の出会いについて詳細に書き、ストーリーは次の話から進むようになっているようです。

 タイトル発表時点からいろいろ推察されていましたが、ストレートに「上にのしかかって下敷きにしてしまった」というパターンでした。出会い方としては良かったと思います。

 ただ、あらすじに「ラブコメ」とある以上、書き出しでもコメディ要素を入れてほしかったというところはあります。主人公が(けがをさせてパニックになってはいるものの)落ち着きすぎているのも、今後の話を進めるのにどうなのだろうという心配があります。大げさに慌てるくらいがちょうどよかったのではないかと思いました。

10-1-16 俺のプラモが最終防衛兵器なんだが!?

https://ncode.syosetu.com/n0181gl/17/

 怪獣に襲われている世界で、組み立てた美少女プラモが戦い始めるファンタジー。

 プラモデルが戦うというのはいくつかありましたが、美少女プラモが戦うというのはなかなかなかったように思えます。書き出しでは戦う直前で終わっていますが、戦隊ものやウルトラマンのような迫力ある戦闘シーンが期待できます。

 こういった設定の場合、説明を先に書きがちなのですが、まずは実践で「どういう話か」というのを分からせようとするのが良いと思います。

 やはり気になるのが、終盤での視点切り替え。ここは主人公視点で行った方が明らかに得だと思います。

10-1-17 烏森の魔女が助けたのは、『心の欠けた僕』でした

https://ncode.syosetu.com/n0181gl/18/

「烏森の沼」に落とされた少年が、呪いを解くために様々なミッションをこなすストーリー。分類的にはサスペンスになるのでしょうか。

「1ヶ月毎日花を届けること」「心臓が2つある人間を探すこと」といった、最初に目的が提示されている部分が良かったと思います。これにより、読者は「どういうふうに話を読めばいいのか」がわかりやすくなります。また、謎の手がかりが見つかったところで終わっているところも高評価でした。

 4000文字という短い中で、物語に必要な要素を入れるのはなかなか難しいですが、当作品は必要な要素が大体でそろっていて、あとは物語を進めるだけ、という段階になっていると思います。構成力に優れた人が書いたのではないでしょうか。

第1会場その3に続く→